この記事は、企業のインハウスデザイナーとして実際に働いてみて感じたメリット・デメリットについてまとめています。
デザイナーとして就職・あるいは転職する際、どのような会社で働くか悩みますよね。デザイナーとしての働きかたは主に「デザイン事務所のデザイナー」「企業のインハウスデザイナー(社内デザイナー)」「フリーランスのデザイナー」があります。
私は「縫製雑貨メーカーのインハウスデザイナー兼イラストレーター」として務めてきました。そこで感じたインハウスデザイナーのメリット・デメリットについてご紹介します。実際に働いてみて、インハウスデザイナーは「デザインが好き」でも「体力がない」「プレゼンが苦手」な人におすすめの働き方だと思いました。
タップできるもくじ
インハウスデザイナー(社内デザイナー)って?
インハウスデザイナーとは、メーカーなど企業に採用され、企業の専属デザイナーとして働く仕事です。「社内デザイナー」や「企業内デザイナー」とも呼ばれます。
デザイン事務所のデザイナーは、クライアントからのデザイン業務を行いますが、社内デザイナーは、就職した企業のデザイン業務に携わっていきます。(企業がクライアントから受けた業務のデザインをすることもあります)
インハウスデザイナーのメリット
労働条件が比較的良い
デザイン事務所のデザイナーに比べると、インハウスデザイナーの方が残業が少ない傾向があります。これは、クライアントの納期に合わせる必要が少ないことも影響しています。
そのため、クライアントの納期に合わせて残業したり、休日出勤したりする可能性は低いです。しかし、企業規模によって労働条件・福利厚生が異なります。中小企業より大企業の方が、労働条件も福利厚生も良い傾向です。私が勤めていた企業は従業員10名以下の小さなメーカーでしたが、定時または残業30分〜2時間程度と短めでした。

営業の仕事とデザインの仕事が分かれている
デザイン事務所の場合、デザイナーが営業を兼ねているという場合も多くあります。デザイナー自身がデザインし、クライアントにプレゼンすることもあります。しかし、インハウスデザイナーの場合「営業は営業」「デザインはデザイナー」と業務分担がされていることが多いため、デザインは好きだけれどプレゼンが苦手な人には大きなメリットです。
私の場合は、営業が持ち帰った仕事を社内でデザイナーに伝え、デザインを作成。そのデザインを営業が客先でプレゼンするという流れでした。クライアントと会う機会が少ないため、人見知りの私にはありがたい環境です。
また、社外の人と会う機会が少ないので、人間関係を築くのが苦手な人も優しい環境と言えそうです。(社内の人とうまくやる必要はあります)自社製品や自社ツールのデザインの場合は、プレゼンというより社内会議ですので、そこまで緊張することもないと思います。
色々なデザイン業務に携われる
インハウスデザイナーは、社内に1〜数人しかいない場合が多いです。そのため、商品デザイン・カタログデザイン・WEBデザインなど、様々な媒体のデザインを担当することがあります。複数の媒体のデザイン経験は、転職する際に幅を広げてくれると思います。
インハウスデザイナーのデメリット
デザイナーの人数が少ないと相談できる人がいない
インハウスデザイナーは企業内に1〜数人しかいないことが多く、相談できる人が限られます。もし、社内に自分しかデザイナーがいない場合、壁に当たったときでも自力で解決するしかありません。
特に小さい会社の場合は教育制度などがないため、誰にも聞けず自分で問題解決するしかないことも。まわりにデザイナーが大勢いる環境であれば、教えてもらえることができるため、成長スピードが早くなるかもしれません。また、まわりにデザイナーがいると、自分とは違った発想があり刺激になると思います。自分のデザインのレベルも知ることができそうです。
色々なデザイン業務をやらなくてはならず、好きな業務に集中できない
社内唯一のデザイナーの場合、企業内のありとあらゆるデザイン業務をこなさなくてはいけない場合があります。メリットに記載したように、様々な媒体のデザインができるようになるという面は良いのですが、好きなデザインにだけ集中することができないところはデメリットとも言えます。
私は下記のデザイン業務を一人で行っていました。
- 商品デザイン・イラスト制作
- 企業サイトページデザイン・更新
- ブランドサイト更新
- 企業通販ページデザイン・更新(2サイト)
- 商品画像撮影・加工
- 企業パンフレット制作
- ブランドカタログ・チラシ制作
カタログ制作やサイト制作の場合、使用する画像・文章の準備から全て一人で行っていました。一般的にカタログなどを作る場合は、掲載する文章は「テキストでもらって流し込む作業」となると思いますが、文章作りからデザイナーの仕事です。掲載する写真も撮影・加工し、カメラマンとしての役割も果たさなくてはなりません。そのため、一つ一つのデザインのスキルを伸ばせず、どれも中途半端だなあと思うことがあります。
例えば「グラフィックデザインが好き」「WEBデザインが好き」など、好きなデザインの媒体が決まっている方には、少しつらいかもしれません。なんでもやってみたい方には良い環境です。
まとめ:インハウスデザイナー向きの人はこんな人
私が思う、インハウスデザイナー向きの方はこんな方です。
- デザインの仕事をしたいけれど、体力に自信がない人
- 初対面の人と会ったり、人前でプレゼンするのが苦手な人
- 様々な媒体のデザインにチャレンジしたい人
よく、最初はデザイン事務所でバリバリ働いてスキルを身につけ、そのあとインハウスデザイナーに転職するのが良いと聞きます。体力のある人にとっては、とても良い選択だと思います。
しかし、体力がない人が無理して働き続けると、転職する気力・デザイナーとして働いてく自信がなくなってしまうこともあります。私は新卒からインハウスデザイナーとして働いてきて、デザイン事務所だったらもっとスキルが身についたかな?と思う時があります。でも、独学で学習する意欲があれば、多少カバーできる部分であると思います。体力に自信がないけれど、デザインの仕事がしたい方に、インハウスデザイナーはおすすめの生き方だと思っています。
おまけ:私がインハウスデザイナーに就職しようと思った理由3つ
私は新卒での就職活動中から、デザイナーとして働くならデザイン事務所ではなく、インハウスデザイナーが良いと思っていました。その思いは今も変わってません。その理由は3つあります。
理由①体力に自信がなかったから
デザイン事務所は徹夜・終電帰りがよくあると聞きます。デザイン事務所に就職した友達は、実際に終電帰りで続けることが難しく、デザイナーの仕事は辞めています。人生での優先順位が仕事ではない場合、終電帰りが続いたら辛くなってしまいます。楽に生きる方法を模索しているブログを書いている私は、もちろん仕事の優先順位は高くありません。おまけに体力がないため残業が少なそうなインハウスデザイナーを希望しました。
理由②デザインよりもイラストを描きたかったから
社内でデザイナーを雇うと言う事は、外注する気があまりないと言うこと。なのでインハウスデザイナーの場合、デザイナー兼イラストレーターとして働けるかもと思ったのです。”イラストの仕事で正社員で安定した収入を得る”と言うのが、学生時代の仕事に対する夢でした。(いまはやってて楽しくてそこそこ安定していれば、食わず嫌いせずなんでもやってみれば良いかなと思っています。)
理由③なるべく客先に行きたくない・プレゼンしたくなかったから
人前で話すことが苦手なので、他社に対してデザインのプレゼンをしたくないと思っていました。デザイン事務所では、デザイナー兼営業といった場合も多いです。営業は向いてない仕事ナンバー1と捉えていた私は、やはりインハウスデザイナーが良いと思いました。
なんだか消極的な理由が多くなってしまいましたが、働く時間は1日8時間以上です。長い時間働くのですから、苦手を避けて好きなことをすることが、日々の充実に繋がっていくと思っています。
